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中国ビジネスマナー入門
中国ビジネスマナー入門 その5 2007 戦術編

最近では、日本人が旅行、出張、駐在などで中国へ行く機会がぐんと増えました。いまや中国は、私たちにとって身近な国であると言えます。けれども、中国人と私たち日本人は見た目は似ているのに、どうしてこんなに違うのか、いったいどう付き合えばよいのかわからない、という声をたびたび耳にします。また、中国人は信じられない、という人もよくあります。

本当のところ、中国人はなにをどう考えているのでしょうか?近くて遠い国、中国なのでしょうか?近くて近い国、中国なのでしょうか?どちらにしても、中国人と上手に付き合っていけるかどうかが、人間関係がものをいう中国でのビジネス成功のひとつの鍵となることは間違いないでしょう。

そこで中国人の思考回路と習慣のナゾに迫るとともに(?)、私自身の経験をベースに、中国人と接するときのマナーを中国人を理解するという姿勢で考えてみました。

※ 2007/03 時点の情報に基づき記しています。

中国ビジネスマナー入門 その5 2007 戦術編
中国の抱える問題 車の走り方から見る中国の行く末 自分の中国語を話すということ
自分の足で行くことの意義 日中の能力のコラボレーション  
 
中国の抱える問題

中国という国は、外側から見れば、ものすごい勢いで変化・進化している怪物のように思われます。実際、GDPは世界ランキング4位ですし、中国の富豪ランキングでは、2005年から2006年にかけて、お金持ちトップランキング400人(2005年)/500人(2006年)の最低資産額が、5億元から8億元(約120億元)に引き上げられたということです(「R25」2007/2/02〜2/08より)。

長い間底辺を彷徨っていた日本の景気が久しぶりに回復の兆しを見せたのは、急速な発展を遂げる中国において、建設機械や鉄鋼に対する需要が増えたことがきっかけです。2008年の北京オリンピックに向けて、この成長熱は頂点に達するでしょう。

街へ行けば、超市(スーパー)では、日本と同レベルの品種・品数をカバーしていますし、物価は北京で日本の約1/3、家電等の価格は日本と同額、10年前はちょっとした贅沢であったマックやケンタッキーは、いまやおじさんひとりでもふらっと立ち寄るぐらい当たり前のものとなりました。携帯は誰でも持っていますし、都市の若い女性のファッションは、日本女性と大差がなくなってきています。

こんなふうに眺めていきますと、私たちの目には、中国の発展・成長しか映りません。けれども、果たして中国の発展は本物でしょうか。

中国では、一気に富豪に上り詰めることも可能ですが、一気に転落する可能性もあります。昨日の大富豪は、今日の乞食かもしれないのです。また、お金持ちと庶民、都市と農村の格差問題は有名なところです。失業は非常に深刻で、新卒失業者が100万人と言われる中国では、例えば、企業に雇用契約を求めると、「きみは明日から来なくていいから」と言われてしまうそうです。大学院を出ても、MBAと取っても職がないというのが現実なのです。

急速な発展の陰で、健康保険も失業保険などの社会保障というものが圧倒的に立ち遅れています。医者や病院のミスで死に至らされ、その事実がもみ消されてしまう患者の数は、日本の比ではありません。

また、北京オリンピックに伴い、胡同(フートン:長屋形式の庶民の住宅)を取り壊すべく、もう何年も前からたくさんの人が立ち退きを言渡されていますが、それがいつになるのかも定かではなく、また、立ち退きのための保障は微々たるものだということです。街中にある胡同と同じ地域に住もうと思えば、1,500万円ほどかかると言われています。

都市近郊の農村では、開発に反対した住民が、暴動鎮圧と称して国によって消されてしまうという、天安門事件を髣髴させるような恐ろしい事件もあります。

日本では、どの駅でも新品に近い自転車がずらっと並んでいる光景を目にしますが、中国では、かなりくたびれた中古自転車にしか乗らないのは、新品だと、何度買い換えても盗まれしまうからです。

確かに、女性のファッションは洗練され、華やかになりました。けれども、例えば、昔からある中国式の仕切りのないトイレで、服を直す際に、流行を身にまとった外見とは裏腹に、彼女たちの穴が開いて薄汚れた下着が見えてしまったとき、私たちは軽い衝撃を受けるとともに、豊かであるということの本当の意味を考えさせられるはずです。

日本では、中国のような大富豪もほとんどいない代わりに、目を背けなければいけないと思わせるような粗末な下着を身につけている人も少ないですし、60代ですっかり老齢になってしまう中国に対して、日本のシルバー世代の女性がこんなにもファッショナブルで活動的であることは、なにを表しているのでしょうか。それこそが、日本経済の底力であり、成熟した豊かさであり、余裕の象徴なのです。

このように、中国を見るときは、外面だけではなく、その内面に隠された現実を冷静に見つめていく必要があります。社会的な歪の非常に大きい国ですし、北京オリンピックとともにバブルがはじけるだろう、とシビアな見方をする人もあります。

中国が、日本のように長期的で安定した本物の豊かさや経済的な体力を身につけるのは、まだまだ遠い先のことでしょう。

 
車の走り方から見る中国の行く末

地方都市に向かって車で高速を走ると、中国人というものがよくわかります。

例えば、高速が渋滞したとします。すると、ある人は、車から降りて、その様子を見に行きます。ある人は、舗装されていない草地の路肩を走ってでも、少しでも前へ行こうとします。片道600〜700キロの距離を走れば、大型トラックが横転している光景に2、3度はお目にかかれます。

また、速度に関しては、法律が厳しいのでだいたい守られているようですが、街中の交差点でも地方の高速でも、ドライバーには、相手に譲ろう、待とうという気持ちはありません。ですから、事故である車線が塞がれてしまったときなど、日本と違い、入れてあげよう、順序よく合流しようという気持ちがないため、かえって渋滞をひどくしています。気に入らないことがあれば相手にどなりますし、双方とも降りてきて言い争いを始めます。いつ事故になってもおかしくないという状態です。

中国を車で走りますと、中国人は、自己主張が激しいだけでなく、およそ協調するということを知らぬ民族であることが見えてきます。ですから、国が発展しているときは、そのパワフルさもよい方向に向くのでしょうが、いったん問題が起きると、その調和精神のなさから、一気に暴動や争いに向かって雪崩のように崩れ落ちていくのではないかと危惧されます。

社会主義市場経済ではあっても、富豪ランキングの35%が共産党員である(「R25」2007/2/02〜2/08より)という矛盾を抱えていても、中国こそが、自分さえ豊かであればいいという資本主義の申し子であり、これに対し、すべてにおいて平和と平等と調和を好む日本は、ある意味、典型的な社会主義国家といえるのです。

 
自分の中国語を話すということ

通訳は、ときとして、自分のわからない言葉や都合の悪いことは通訳しなかったり、交渉がうまくいくようにとのアドバイスを超えて、自分の気持ち・意見を織り交ぜて訳したりすることがあります。

ビジネスの交渉には、言葉そのもののレベル以上に、専門知識が求められます。ですから、中国で交渉する際、自分の言葉に自信がない場合は、その分野の知識もあり、交渉の目的や方針を理解していて、こちらの立場で訳してくれる、信頼がおけてかつレベルの高い通訳が必要です。交渉には、関わるメンバー全員が十分に打合せしてから本番に臨むことが必要であり、決して相手の通訳に任せていてはいけません。相手の通訳に任せてしまうのは、戦いを放棄しているのと同然です。

日本人は誰でも日本語ができますが、レベルの高い日本語を話したり、専門分野について話せるというのは、訓練された人だけです。同じように、どの言語においても、言葉ができるから通訳ができる、というものではありません。通訳は皆、専門分野を持っています。あるいは、その度ごとに勉強・研究してから通訳に臨むのです。そして、できる通訳ほど、専門知識を持ちたがっています。

ですから、安いということを理由に、ちょっと日本に留学経験のある中国人を使うなどということはお勧めできません。訪中メンバー内もしくは社内でまかなえない場合は、経費がかかっても、能力の高い信頼できる通訳を確保しましょう。

また、自分自身がある程度言葉ができる場合は、恥をかいても、冷や汗をかいても、大事なことは自分の中国語で伝える努力をしましょう。どうしても伝わらないときは、書いてもかまわないと思います。言葉の不足は、ベースとなる知識でカバーできます。聴き取るにしても、英語と同様、文法は中学生/初心者レベルでもかまわないので、その方面の単語をどれだけ知っているかという語彙力がポイントとなるように思います。

もちろん、言葉も知識も100%であるに越したことはありませんが、言葉が100%で知識がないよりは、言葉は50%でもいいから知識が100%であることのほうが重要です。どちらが正確に相手に伝わるかといえば、後者なのです。ベースとなる知識のない言葉は、特にビジネスの場合、完全に伝えることは難しいと思います。けれども、言葉が不十分であっても、ベースとなる知識が十分である場合は、知っている言葉に置き換えて伝えることもできますし、相手の話を理解する力が大きくなり、想像力やカンが働くのです。ですから、言葉の不足は、ビジネスや専門分野の場合、知識でカバーすることが可能です。

このように、たとえ信頼のおける通訳がいたとしても、今後中国ビジネスを行っていくのならば、中心メンバーの誰か/それぞれが、中国語を覚えていく必要があるというのも事実です。そうすれば、相手の話している中国語、通訳の話している中国語もわかりますし、間違えがあれば自ら訂正できるからです。どんなに有能な通訳がいたとしても、やはり、手続や交渉をしていく人自身が中国語を感じ取れること、自分の中国語を話せることが大切です。

中国人は、日本人が上手に中国語を話せないことを馬鹿にすることはないと思います。むしろ、少しでも話せること、話そうとすることを珍しがり、また、驚き、評価します。時には脅威にすら感じるのです。ですから、本番こそ最高の実践の場ととらえ、思い切って話してみましょう。回りの目や恥を気にせず、積極的にそういうことのできる人、しようとする人、それを楽しめる人こそが、中国に向いているのだと思います。

 
自分の足で行くことの意義

中国側との商談・交渉には、可能な限り、自分たちの足で行くことをお勧めいたします。高速道路は発達していますので、運転のできる中国人の協力が得られるならば、片道500キロぐらいでしたら自家用車もいいですし、飛行機や列車を利用する場合は、空港や駅からはレンタカーを借りるか、自分たちでタクシーを拾って目的地に向かいます。

商談で有利になりたいならば、決して、相手のお迎えに身を任せてはいけません。同様に、相手の本拠地においては、食事代は相手が支払っても、ホテル代や足代は必ず自分で負担しましょう。

中国では、大変ではあっても、多少無理をしてでも、自力で相手の本拠地に乗り込む、ということが非常に大きな意味を持ちます。これをサポートする中国人協力者がいるということは(中国は、国際免許が通じません。中国で運転するには、中国の免許が必要です。けれども、交通事情も厳しいですし、中国で運転する外国人は非常に少ないと思います)、相手に一目置かれることになりますし、自家用車でもレンタカーでも、車を自由に使えると、行動と気持ちに余裕ができます。また、自力で移動することにより見えてくるものもたくさんあります。

ただでさえ、相手の土俵で勝負することは不利です。それに加えて、これらを相手のお世話になったり、あるいは相手の都合に合わせてアレンジされてしまいますと、楽である一方、相手のペースでものごとが運んでしまうことになります。それでは、交渉は、初めから半分負けたも同然です。

中国人との商談・中国での交渉においては、どんなときも、私たちのために○○してください∞ぜひとも私たちに○○させてください≠ナはなく、私たちはあなたたちのために○○することができます≠ニいうスタンスでいることがポイントです。商談・交渉は、こちらがいかに能力があるかをプレゼンする場であり、こちらと結びつけばいかに特であるかを相手に感じさせる場です。ですから、決して、お客さん待遇で熱烈歓迎≠ウれて、舞い上がってはいけないのです。相手に熱烈歓迎≠ウせるチャンスを極力与えないぐらいの気持ちが必要です。そのためには、相手のペースに巻き込まれず、あくまでも自分たちのペースを貫くよう強く意識し、淡々と行動することが大切です。

 
日中の能力のコラボレーション

中国語のできることや日本語に堪能な通訳のいること、商習慣を心得ていること、有力な人物との人脈のあること、あるいは投資するお金のあることが、即、中国ビジネスにつながるわけではありません。それらは、あくまでも側面あるいは、条件のひとつです。少なくとも根っこではありません。表面的な条件をいくら完璧にそろえても、本当の意味では成功できないでしょう。中国は、そんなにたやすい国ではありません。基本的に、日本人の手には負えない国です。中国ビジネスは、もっと泥臭い、人間対人間の勝負なのです。

では、中国ビジネスにおいて、もっと大切なこととは何でしょうか。それは、中国語はできなくとも、自分の頭脳となり味方となってくれる日本人協力者がいるかどうか、さらに、日本語はできなくとも、相手の裏を読み、中国・中国人を理解する助けとなってくれる中国人協力者がいるかどうかです。メンバーそれぞれがもともと持っている能力そのものであり、お互いの信頼関係の深さであり、なにが正しいか、真実であるかを見抜く力です。また、習慣やマナー、あるいは言葉について自信がなくても、善良かつ真摯な姿勢で中国・中国人と向き合えること、言葉や文化を超えて相手の能力や人間性を評価し、尊重できることです。

(けれども、その場合でも、自分がまったく中国語ができないのではなにも進みません。ある程度はできることが条件であり、そうすれば、日本人協力者と中国人協力者の仲介役となることもできますし、交渉相手の中国語や意図することがわからない場合、中国人協力者にサポートしてもらうことができます。ですから、ハイレベルではないにしても、自分自身中国語ができるということが、ひとつのポイントとなります)

中国ビジネスにおいては、日中双方の信頼関係に基づいた能力のコラボが欠かせないと思います。知性と人間性、知恵と工夫の総結集です。これが高い次元で実現されたとき、きっと、成功もついてくるのだと思いますし、中国ビジネスとは、まさにそれを求め、築き、育てていく過程そのものです。特別なものが必要なのではなく、本当に基本的なことを、辛抱強く、地道に積み重ねていくことができるかどうかなのです。

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