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「そうだねえ。マクドナルドもいいけど、うちに食べにおいで。」 「でも、毎日食べに行くのは悪いもの。」 「なに言ってるの。まりつが来るのをみんな待ってるんだよ。
だから毎日おいで。わかった?」
そして2日目の夜も、GG一家の住む胡同(フートン:北京の伝統的長屋式家屋)に向かったのでした。
「コンバンハ。そうだ、飛飛(フェイフェイ:お兄さんの息子)、運転免許の試験どうだった?」
「うまくいったヨ。合格した。」
「やったネ! おめでとう!」 「ありがとう。」
あまり自分を主張することのない、物静かではにかみやな飛飛ですが、車の運転にはちょっと自信があるよ、という余裕の笑顔を見せてくれました。
「まりつ、いいかい。 きょうは“これぞ北京”というごはんを食べさせてあげよう。」
「“これぞ北京”って、水餃子じゃないの?」
「違う。餃子じゃないよ。面条(ミェンティアオ:麺、うどん)、“炸醤面(ザージァンミェン:ジャージャー麺)”だよ。」
「ザージァンミェン? うそー。餃子じゃないなんて。知らなかったよー。北京=水餃子かと思ってた。」
お兄さんは私を驚かすことができて、得意そうに笑います。姐姐(ジエジエ:お姉さん・・・お兄さんの奥さんは私にとってのお姉さん)の作っているそばに行って、さっそく見学です。
醤(味噌)は麻婆豆腐に使われる豆板醤に近いものです。北京でいう麺は、日本のラーメンではなく、どちらかというと細めのうどんです。
醤と挽肉などを多めの油で炒めるというよりは、少なめの油で揚げるという感じです。今朝の焼き餃子もそうでしたが、中国では炒めると揚げるの間の油の使い方があります。それが「炸」です。
そのルー(?)と茹でた麺をからめてできあがりです。
「いっただきまーす!」 はじめての体験にわくわくです。 「おいしーい!」
味は麻婆豆腐的で、まったりとしていて「中国式スパゲティ・ミートソース」という感じです。ワタシ好みです。またまたおいしいもの発見です。
日本の中華屋さんで出てくるジャージャー麺とはだいぶ違います。日本のはラーメンに味噌味の挽肉がのっているものだと思いますが、これが本家本元の“北京炸醤面”なのです!
でも脂っこいので、たくさんは食べられないかなあ。
「どお? うまいでしょ? 僕はこれがいちばん好き!」と炸醤面に一票のGGがばくばく食べます。 「僕も。」と父に洗脳されている飛飛が、続いて一票。大盛りです。
「私はやっぱり水餃子!」まりつ、餃子に一票。 「私も餃子。」お姉さんが餃子に一票。
「君たちは気が合うね。でも、僕は餃子はあんまり好きじゃない。」何かと餃子にけちをつけるお兄さんは、きっともぐりの中国人です。
「まりつ。本当にね、これが北京のいちばん伝統的な、北京でいちばんよく食べられている一般的な家庭料理なんだよ。」 「ふーん、そうなのかあ。本当に知らなかった。」
まりつは、またまた本物の北京にひとつ触れることができたのでした。
食事の後、お姉さんが何枚ものスカーフをベッドの上に広げます。
「きょう、買い物に行ったときに買ってきたんだけど。まりつはこういうの好き?」
「スカーフは大好きでよくします。」
「どれが好き? いいものではないけれど、あなたの気に入ったのを選んで。それからママにもね。いらない分は返すから大丈夫なのよ。」
「ええ、でも、そんなの申し訳ないから・・・。」 「いいから、いいから。」と、お兄さんも選ぶように言います。
「我喜歓藍色的(ウォァ シーホアン ランスーダ:私、紺色のがいいな)。」
「そうだね。君にはこれが合うね。」
でも、縁の始末が少しほどけているのがちょっと気になって、他の色のにしようかな、と迷っていました。
「ああ、ここね。せっかくあげるのだから、ちゃんとしたのがいいわ。 明日行って取り替えてくるからネ。」
スカーフをまりつとその母に、というお姉さんの女性的なやさしい気遣い。精いっぱい私をもてなしてくれる気持ちが、その笑顔にあふれています。
何をやらせても無器用なまりつですが、スカーフを結ぶのだけはちょっと自信があります。
そこで私は、まりつはきっとこのスカーフを愛用します!と言うかわりに、いくつかの結び方をみんなの前で披露してみせました。
りぼん、変形りぼん、ちょうちょ・・・。 どれも30秒ほどでできます。
「ほぉー、すごいねえ。」
子育て上手のふたりがオーバーにほめてくれ、これでめでたくまりつの「スカーフ通」が証明されたのでした。
いつのまにか夜中になっていました。楽しい時間はあっという間です。 「明日もまた来てね。待ってるわ。」まだ炸醤面の匂いの残るこの居心地のいい家を後にし、私はホテルへ戻りました。
つづく
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