TEA TIME

北京レポート

第17回 / まりつ流「忍法、行政書士の術」!?

オンナ行政書士・まりつの中国ビシネス(?)ずっこけ奮戦記(1999年1月)

中国ホット情報

  1. 最近の西安には、ケーキ屋さんがたくさんできているそうです。あの中国的バタークリームのね、と思ったら、日本人好みの生クリームのケーキだそうで、お茶も飲めるということです。ちょっと見ぬ間に、中国はどんどんおしゃれに進化します。
  2. 以前北京では、外国人は外人用住宅に住むことと決められていたのですが、最近では中国人の知り合いの力を借りれば、中国人向けアパートに住めることもあるそうです。でもそれが本当だとしても、よほど現地&中国人に精通した人に限られると思います。

本当の舞台

私は深呼吸をひとつします。

自慢じゃないけど、得策なんかな〜んにもないわ。でもワタシ、ひとつだけわかるのよ。

アナタは、実際は自分のほうが不利だと知っているからこそ、そうやってオドしたりだましたり能力のあることをひけらかして、ワタシを恐がらせることで管理しようとするのよ。

でもそれって、本当に強い人はけっしてしないことだわ。弱いからこそ、見かけ倒しの強さを振りかざすのよ。アナタのように半端に賢い人にありがちなのよね。

「たしかに、Lさんのおっしゃるとおり、S社は一度は天津へ来るべきです。私もS社に何度もそう言いました。中国へ行ってみなければ本当のことはわからないですから。面と向かい合うことをせず契約を取り交わすこと自体、問題があるんです。それは私もわかっています。あながた非常に努力されていることも知っています。」

まず、相手の言い分のうち納得できる部分を探して同意し、ついでにちょっとよいしょしておきます。この手の人は、能力とプライドを傷つけられることがいちばん嫌いです。

そして、自分の能力に自信のある中国人は、自己の野心の達成のためなら確実に動くはず、と私は判断しました。

「でも。私からすれば、あなたもまた、日本のやり方がわかっていらっしゃらないように思います。たしかにS社はあなた方なしでは大変にはなりますが、L公司なくしても、事業は成り立つんです。あなた方にとっての日本の市場よりも、こちらにとっての中国の市場のほうが断然大きいんですよ。

ですから、あるていどこちらの要求をのんでいただいて、もっと数を増やしていただいたほうが、結局あなたにとってもトクになるのではないですか? これが成功すれば、あなたにとってもひとつのステップになると思いますけど。もしあなたがそんな要求はのめないとおっしゃるのなら、仕方がありません。それはそれでかまわないんですよ。でも、そちらの場合、S社との取引がだめになったとあると、日本側に対する信用を失うことになると思いますが。」

アナタがその手でくるのなら、ワタシはオドシの倍返しよ。名づけて「忍法、倍返しの術〜」。

「どうですか? 目先の利益と優位性をとるか、それとも将来的なより大きな利益をとるか、ということです。どちらがトクか、あなたでしたら簡単におわかりになるはずです。」

野心家の彼は、小さな獲物より、大きな獲物を狙うはずです。私は、彼の目の前に、より大きな未来を提示します。

一度くらいついたら離さない、どこまでもしつこく強気なまりつ。名づけて「忍法、ピラニアの術〜」。

舞台の女優

でも、なにせ短気なまりつですから、熱くなってはおしまいです。ですから、淡々と冷静に落ち着いて話すことだけを心がけました。

ここは少しは威厳をもって、本当のまりつを悟られないようにしなければね。たとえはったりでも、アナタよりもオトナなのよ、と見せなくちゃ。相手を自分のペースに巻き込むことが肝心よねー。

名づけて「忍法、気分はすっかり女優の術〜」。

一方で不安と緊張の中にさらされて、どきどきする自分。その一方で、この駆け引きをゲームのように楽しむ自分。

でも、確実に不安より快感のほうが大きいのでした。

窮地の場面で、どうしてノーテンキかつふてぶてしくいられるのか、自分でもよくわかりません。でもなぜか私は、ここが中国という外国だと思うと、とても自由で開放された気分になるのです。

私はいま、なににも邪魔されることなく、なににもとらわれることなく、自分の責任と能力とにおいて、北京での経験・・・それはただ楽しいだけのものではありませんでした。そして私は、たった半年のこの経験を最大限に使って生きていこうと決めたのです・・・を思う存分試すことができるのです。

だから、それだけでうれしいのです。

「そうですね。そのほうがたしかにこちらもトクかもしれませんね。これを成功させないと、その先がありませんからね。ただ、今回はまにあいませんので、次回からということでいいですか?」

「ええ、けっこうですよ(やったー、第一関門突破)。」

次が問題だわ。でも、なんとしてでも彼にうんと言わせなければ・・・。う〜ん、なにかいい方法は・・・そうだ、これはどうかな!

「証明書については、そちらから先に振り込んでいただかないうちは、どんなことをしてもお渡しするわけにはいきません。それだけはお譲りでできません。それをしないことで、もしあなたが中国側の信用を失うとおっしゃっても、それはあなた方の事情であって、そこを信用させるのがあなたの責任なのではないですか。あなたの能力をもってしてならできると思いますが。

こちらとしても、国レベルの信用がかかっていますし、第一私は、行政書士という国から資格をもらって仕事をしている身分ですから、国家に逆らってまでというわけにはいかないんです。」

なんら力のないまりつは、行政書士が国家資格であり、その意味において日本の法律に従い業務を遂行する義務があり、万が一それに反した場合は資格剥奪もありうる、だから自分ひとりの愚かな行動で、行政書士全体の信用を失わせるようなことはできないし、ここ中国で日本人として日本の名誉を傷つけるわけにはいかない、日本は国際社会のリーダーなのだから・・・とその意義と責任を重々しく述べます。

名づけて「忍法、行政書士の術〜」。

これは、なんのワザもないまりつが国と行政書士の力を借りて自分を大きく見せるための苦し紛れの術です。でも、あの彼がまじめに聞いています。

「加藤さんは言い方がうまいですねえ。でも困ったなあ。これに関しては本当に厳しいんですよ。でも、最終的には国の法律がからんできますからね。手堅くやっておかないと、結局ウチが困りますし・・・わかりました、最大限に努力してみます。」

「ありがとうございます(ふーっ、第二関門突破)。それから。特に銀行に関しては、C銀行ひとつに絞っていただきたいんです。C銀行は日本に支店もありますし、あなたはご存知ないかもしれませんが、日本側の信頼度が違います。

これに関しては、あなたのお客さんに強く主張していただきたいのですが。そのほうが、あなたにとっても無駄な手間が省けて、これから仕事がしやすくなると思いますよ。どうでしょうか。」

「はい、これについても努力しますよ。まかせてください。やはりウチも利益を出したいですからね。僕も馬鹿じゃありませんから、なにがトクかはわかりますよ。これからなんですよ、この会社は。そして僕のめざしているのは、その先なんですよ。」

ついに彼が全面的に「努力」を約束し、自分の未来を描きながら納得の表情をしたとき、「ヤッター!」と心の中で叫びました。

うふっ、今日からまりつも忍者の仲間入りだワ

つづく