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「困ったねえ。」にっこりとしながら困るGGです。そうして、未練たらたら、ようやくやめてくれました。
「私は彼の人間性が不安なの。でもやっぱり、彼の人としての善し悪しは関係ないのかなあ。」 彼がもし本当に自分の将来を考えていれば、確実にやるはずです。たとえ狡くても、むしろ狡いほど自分のトクになることは、やり遂げるはずです。
いったん目標が決まればとことんやる。それが中国人です。
「そうだ。先に支払われるのなら、危険度は少ないと思う。ビジネスとしてお互いに成功したければ、彼にも権利を与えてこちらに都合のいいように動かすことだ。」
「うん、そうだね。」
私たちの問題にしている証明書は国の法律の絡んだ問題で、それに逆らったら自分も終わりだということぐらい彼もわかっているだろう、ということです。
彼の人間性は別として、将来の自分の利益のために確実にやっていくはずだ、とGGは言うのです。人格と能力は別だということです。
「彼は頭はいいよ。僕には、彼も必死だというのがよくわかるよ。いまこの業務を成功させないと、それ以上の大きな成功はあり得ない、と自分で考えているはずだよ。」
「うーん。」 GGの言うことはよくわかるのですが、私はやっぱり不安を拭い切ることはできず、心の中の自問自答は続きます。
「さあ、そろそろ行こうか。オリンピック・ホテルまではけっこうあるよ。」 「うん。外に出れば気分も違うかな。」
私たちは、約束の時間に間に合うように明宮ホテルを出ました。「まいったな。渋滞だよ。」GGが時計を見ながら言います。
私はといえば、GGの心配は他人事であるかのように、いまや自分のことに熱中しています。
「まりつ、さっきから誰に手を振ってるの?」
「ほら、あのトラックの荷台に乗った軍隊の男の子たちだよ。まずい? 軍隊に怒られちゃう?」
「まりつだねえ。」
「ほら、みんな手を振ってくれてるよ! GGも振ってよ。」と私はお兄さんにもすすめます。
しかたなしにちょっと手を振ってみせるGG。 まりつにつきあわされるGGはたまったもんじゃありません? (この際、宿命と思って潔くあきらめてもらうしかないねぇ)彼らはお互いにときどき顔を見合わせ、うれしそうになにやら話しながら、すがすがしい笑顔とともに手を振り返してくれます。何度も、何度も。
(中国の若者はつきあいがいいよ)
ときにはすれた感じの男の子や、ジャニーズ系の顔立ちのすかした男の子もいますが、北京で出会う若者の多くは純朴ではにかみやで、かつ凛としています。
(ひょっとしてわたしゃ、笑い者になってるのかねえ?)
ちょっと不安になるまりつ。 (ま、気にしない、気にしない!)
こんなことがきっかけで、一転してさわやか〜な気分になってきちゃうのですから、やっぱりまりつはおめでたいオンナです。
(ひょっとしてこりゃ、年下軍隊青年に対する団体ナンパ罪だね?)
なんてったって、夜、男女が車の中にいるだけで公安に尋問されちゃう国だからねえ。 (ホントです)「GG! まりつはね、日中友好の手を振ったんだからねっ!」キッとGGを見据えるまりつ。
「わかってるよ。」相手にしていないGG。
たった数分のできごとでした。再び彼らと会うことはないでしょう。でも、こういうことのひとつひとつに、私は中国での出会いと別れの機微を感じるのです。彼らにとってはなにげないことでも、私にとっては忘れられない光景として心の中で重なり合っていくのです。
VOLVOは、なんとか約束の2:00より前にオリンピック・ホテルに到着しました。私たちはロビーで史女士を待ちます。GGよりもいくつか年上の彼女は、私たちが以前いたK公司の副社長をしていた人でした。その前は政府の役人でした。
カナダ仕込みの英語がペラペラの、非常に優秀な彼女は、GGを個人的に信頼していて、よく相談を持ちかけていました。
中国では、会社とか地位というより、まず個人対個人を重視するところがあります。それが中国の人社会の特徴であると同時に、中国のおもしろさ、ひとつの懐の広さではないかなと思うのです。
また、「不可能」を「可能にする」ことにもつながるのです。
まわりの中国人から話を聞いて、彼女は私のことを「忍耐力のある強い女性ね」と言っていたそうです。 (まりつの本性=アクタレは知らされなかったんだねっ、こりゃ)
けれども、日本人に何度もいやな思いをさせられた彼女は、日本人不信に陥り、同じく日本人である私のことも好ましく思っていないようでした。その後も彼女と連絡をとっていたGGが私の近況を話し、彼女と知り合っておくことはきっと私の仕事に役立つだろうと、こうして彼女に会う機会をつくってくれたのです。
(やーっぱ、GGはお兄ちゃんだったんだねえぇ・・・しみじみ)
「ニイハオ!」向こうから、にこやかに手を振りながらこちらへ近づいて来る女性がいます。彼女が、私のずっと会ってみたかった史女士です。
つづく
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