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2.点滴の針が頭に!?
2000/1/19

末っ子のウーは、喘息持ちです。生後数ヵ月でアトピー=アレルギー体質だとはわかりましが、北京の協和病院で「おそらく喘息でしょう。」と診断されました。

そして喘息坊やウーは、わずか7ヵ月の滞在でなんと4回も入院したのです。

最初に入院した協和病院でのことです。

もともと、血管が透き通って見えるぐらい肌が白く薄く、幼いゆえにその血管も細く、点滴の針がささりにくいウー。外国人病棟の看護婦さんが何度やってもうまく針がささりません。2回、3回・・・5回、6回・・・! どの看護婦さんがやってみても同じ。

ちょっとー、ウチのウーになにするの!?

手の甲を紫にして泣き叫ぶウー。あんまりだわ・・・!

いくら赤ちゃんの手に針をさすのが難しいとはいっても、看護婦さんでしょ、プロでしょ。いったいウーはどうなるの? なんとかならないの?

中国の医療レベルに対する不安がピークに達するころ、一筋の光明が・・・!

えー、そんなぁ。

中国では赤ちゃんは頭に点滴をするとはちらと聞いていましたが、まさかね。でも、ついにウチのウーにもそのまさかの時が!

あるとき病室に戻ってみると、ウーのおでこに点滴の針が刺さってる!

我が子の頭に点滴の針のささっている光景は、なんとも痛々しく、愛らしく、またこっけいでした。

ウーの眠っている夕暮れ時、ベランダに出てみて北京の景色を見渡すと、沈もうとしている太陽に染められて、空が朱色にも似た暗い桃色に変わっていくところでした。その桃色の空に浮かびあがる故宮。一方では近代的な高層ビルやマクドナルドの“M”のマーク。同じ空間にある過去から未来につながる歴史の間を自由に行き来する鳥。ああ、これが中国、北京なのだなあ。滞在して1ヵ月、はじめてじっくりと眺めた北京の風景でした。

晩春の夕暮れに静かに映し出される幻想的な北京。この温かく心地よいなつかしさは、いったいどこから来るのだろう。そう、それは自分の遠い記憶の中でたしかに見たことのある風景。中国がこんなにも私たち日本人になつかしさを感じさせるのは、きっと私たちの民族の歴史がその中でつながっていたからなのだと思うのです。そして自分の中に無意識のうちに息づく祖先の魂が、中国に触れたときに再び揺り起こされるのでしょう。

  母・・・イエ、姉に抱かれるウー
《母・・・イエ、姉に抱かれるウー^^;》

ウーの明日が不安でもあり、切なさに私は涙が出てきそうになりました。

さて、この協和病院には外国人病棟があり、先生や看護婦さんが英語を話すので、いろいろな国の人が訪れます。待ち合い廊下で、英語で話す両親に中国語で答える黒人の小学生の男の子を見たとき、私は新鮮な驚きを感じました。この子の中には、祖先の魂と、アメリカの精神と、中国の心がすでに共存しているのです。

いろいろな国のいろいろな民族が、中国というひとつの国で中国語というひとつの言語を介して通じ合う。考えてみれば、とても不思議でとても感動的なことです。こういうことを理屈ではなく肌で感じるとき、世界は本当にひとつであるはずだという思いを強くします。そして、まちがいなく自分もその中のひとりなのです。一歩日本の外へ出たとき、私たちは自分の中の日本を感じるとともに、地球人としての自分を感じるはずです。

ところで、食事はその国の文化に触れるもっとも基本的でお手軽な機会だと私は思っているのですが、ここの外国人病棟の食事に出てくる餃子湯(チャオズタン:餃子スープ)はおすすめの一品です。ただし、入院という深刻な事態が発生しないことにはそのチャンスのないのが残念ですが・・・。

さて、頭に刺す点滴が効いたのか、ウーは少しずつ元気になってきました。

ある日、点滴のとれたウーの手を引いて病棟の廊下を歩いていると、向こうからやってくるふくよかな金髪のご婦人が、「オー、ピッコロ!」とウーを見てニコニコ。

ピッコロ?

某TV局の「じゃじゃまる、ぴっころ、ぽろり」の「ぴっころ」、フルートの小さくなったような「ピッコロ」。

そっかー。「ピッコロ」というのは、たぶん「かわいい」とか「小さい」とかいう意味なんだわ。英語でいう「pretty」なのね。でも、おかしいわ。よその人から見ればおせじにもかわいいとはいえない、スカートはかせても女の子に見えないぐらい厳つい「わさび顔」のウーなのに。

すれ違いざまに、「チャオ、ピッコロー。」とやさしい笑顔でウーに手を振るそのご婦人。「チャオ」から「ピッコロ」がイタリア語だとわかった私。これが、北京滞在中に私の覚えた中国語以外の唯一の外国語です。

こうして協和病院でのウーの入院生活が、北京に対するいくつかの最初の印象を私に植えつけることになったのです。

さて、その後しばらくして、ピッコロ@頭に点滴坊やも無事退院しました。

このめずらしい体験がきっかけとなったのかどうかは定かではありませんが、ウーはとてもがまん強くなり、3歳ごろからは、おとなでも涙の出そうな点滴の針をさされても泣かなくなりました。その男らしさがご自慢のウーです。

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