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3.日本のしつけ、中国のしつけ
―1998年ブーの通う小学校において行われた「国際理解集会」のための原稿より
2000/1/23

日本の子どもたちとお母さんたちへ

ニメンハオ。皆さん、こんにちは。

今日は皆さんに、私が中国に住んで感じた、中国と日本の子どものしつけの違いについてお話したいと思います。

ある日、王さんという中国の人と私がよその事務所に行ったときに、1歳半だった一番下の子が、そこにあったものをいたずらしました。

私は子どもに注意しながらも、心の中では「まだ1歳半なんだからしかたない。」と思っていました。でも、王さんは言ったのです。「中国では、たとえ1歳の子でも、よそへ行ったらいたずらしないよ。そういうふうにしつけられているんだよ。」と。私は、「そんなの信じられないわ。」と思わず言い返してしまいました。

けれども、後で私は、王さんの言ったことは本当だったんだと知ったのです。

それは、やはり一番下の子が喘息で中国の病院に入院していたときのことです。同じ小児科に入院していた、9歳・12歳・13歳の三人の中国人の男の子たちと友達になりました。

あるとき、いただきもののドーナツを「食べてね」と彼らにすすめました。けれども、三人とも「いらない。」と断るのです。私は、日本の子どもだったら、たいがい「ありがとう!」と素直にもらうのにな、と思いました。

  入院仲間?のお兄ちゃん達とウー
《入院仲間?のお兄ちゃん達とウー》

この三人の男の子たちは、私たち親子にとてもよくしてくれました。私は感謝の気持ちを表したくて、ちょうど持っていたスヌーピーの蛍光ペンを、彼らに渡そうとしました。ところが、彼らは例によって手を出そうとしません。私は困ってしまいました。

「あなたたちが親切にしてくれてとても嬉しいの。これはお勉強に使うものだし、お母さんにも叱られないから。だから、どうしても受け取って。お願い。」と、何度もしつこく説得しました。そして、やっと三人は「ありがとう。」と言って、受け取ってくれたのです。

そのときの彼らの態度が、とても嬉しそうだったのと同時に、よその大人である私にたいへん礼儀正しかったことが忘れられません。

この体験を通して私は知りました。三人はドーナツや蛍光ペンがほしくなかったわけではないのです。

ただ、中国の子どもは、よその人からやたらにものをもらってはいけない、ほしがっていると思われることははずかしことだ、と小さいときからおしえられているのです。だから、こちらが「どうぞ」と言っても、三人はすぐには受け取らなかったのです。

そして、このとき私は、王さんの言った「中国の子は、たとえ1歳の子でも、よそへ行ったらちゃんとするようにしつけられている」という言葉を思い出しました。赤ちゃんだからよそでいたずらしてもしかたないと思っていた自分を、社会全体が子どもに甘い日本のしつけを、心から恥ずかしいと感じました。

またあるとき、この王さんと私と私の三人の子どもが、買い物へ行ったときのことです。うちの子どもたちが、デパートの入口のところでおいかけっこをして遊んでいました。

私は子どもたちを叱りましたが、いっこうに言うことをききません。まわりの外国人たちが見ています。王さんはこのときも私に言いました。「僕は、この子たちが自分の知り合いだと思われることが恥ずかしいよ。」と。

私は王さんに謝りました。そして、子どもたちに言いました。「日本を知らないすべての人たちが、私たちを見て日本を理解するのよ。あなたたちがきちんとしていれば、日本の子どもはいい子なんだな、と思うし、お行儀が悪ければ、日本の子どもはこんなふうに悪いのか、って思うのよ。私たちを通して、よその国の人は日本を見るのよ。小さくても、あなたたちは日本の代表なの。責任があるのよ。そう思ってこれからは行動しなさい。」

それは同時に、親である私自身に言い聞かせている言葉でした。

「ひとりっ子政策」の中国では子どもたちはみんなひとりっ子ですから、それなりにわがままです。でも、他人に対して礼儀正しくないこと、わがままにふるまうことは許されません。

何がいいか、悪いか、そしてがまんすることを親は赤ちゃんの頃から徹底的にしつけます。ちょっと昔の日本もそうでした。でも、今の日本の子どもたちはがまんすることを知りません。

今の日本のしつけは、子どもにとても甘いと思います。それは、私たち大人が自分たちに甘いことと同じです。一歩日本の外へ出てみると、それがよくわかるのです。

「親の顔が見たい」という言葉があります。まず親の責任ではありますが、しつけは親だけが負うものではなく、すべての大人によって、地域全体、社会全体で根気よく行われるべきものです。ウチの子さえよければいいのではなく、すべての子をよくする責任がすべての大人にあるのです。

いま、21世紀を目前にして、しつけというものを見直してみるときに、そのぐらいグローバルな気持ちで取り組んでいくことが大事なのではないでしょうか。

では、子どもであるみなさんはどうすればいいのでしょうか。大人に怒られるから、大人がうるさいから、お行儀のよいいい子にしなければいけないのでしょうか。違いますよね。 私たちはひとりで生きているわけではないのです。大勢の人たちの中で生活しているのです。たくさんの人が集まれば、何かルールがなければめちゃくちゃになってしまいます。また、それぞれが少し人の気持ちを考えたり、少しがまんすれば、その「少し」が「たくさん」になって、私たちの社会はもっともっと住みやすくなります。

そして、何をするのがよくて、何をするのがよくないのかは、小学生のみなさんでも簡単にわかります。自分がされたくないことは相手にもしない、自分がしてもらってうれしいことは相手にもしてあげる、ということですね。

「しつけ」とは、みんなが仲良く気持ちよく暮らしていくためのルールや人の気持ちを、大人と子どもがいっしょになって学ぶことです。

ですから、社会のルールを守るのは、大人に叱られないためではなく、またほめられるためでもなく、これが大きな和になることによって、日本、そして地球がうまく回っていくからなのです。みなさんひとりひとりがその大事な役目を果たしているのです。

今や日本は世界のリーダーです。世界中の人たちが、日本を見ています。ですから、「自分もその日本の代表なんだ」という大きな心を持ってほしいと思います。そうすれば、自分だけではなく、みんなが気持ちよくなるために行動することが、本当は一番気持ちがいいって自然にわかると思うのです。

自分以外の人たちのことをちょっぴり考えてみること、それが同じ地球で暮らす世界の人々を理解する一歩につながると思うのです。私は中国で暮らしてみて、自分の子どもへのしつけの甘さを反省するとともに、こんなことを学びました。

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